仏教の「空」から考えるサンクコストとリーダーの意思決定
仏教の「空」の思想は、執着を手放すことの重要性を説く。サンクコストに囚われるリーダーが、2500年前の知恵から学べることとは。
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サンスクリット語 anātman。バラモン教の『アートマン(恒常不変の自我)』を否定する仏教特有の教義。人間は色・受・想・行・識の五蘊(5 つの要素)の一時的な集合であり、その背後に固定した自己はない、とする。
正式名『大方広仏華厳経』。3 世紀頃までに成立した大乗経典で、東大寺の本尊・毘盧遮那仏で知られる。すべての存在が互いを映し合う壮大な相互包摂の宇宙観を展開し、中国で華厳宗として大成された。
サンスクリット語 pratītyasamutpāda。『これがあればそれがあり、これがなければそれがない』——あらゆる現象は独立に存在せず、無数の条件の連鎖として生起し消滅するという仏教の根本原理。十二縁起として体系化された。
京都の名門・久我家の出身。比叡山・建仁寺で修行後、24 歳で宋に渡り、天童山の如浄から曹洞禅の印可を受ける。帰国後、越前に永平寺を開き、只管打坐を広めた。主著『正法眼蔵』は日本思想史上最大級の哲学書として評価される。
釈迦が説いた実践論。正見・正思惟・正語・正業・正命・正精進・正念・正定の 8 つの『正しい道』からなり、認知・思考・言語・行動・生活・努力・念・瞑想の全領域を扱う。中道の具体的実践として位置づけられる。
釈迦が悟りの後、初めて説いたとされる教え(初転法輪)。苦諦(問題の事実)、集諦(原因)、滅諦(解決可能性)、道諦(方法)の 4 段階で構成され、仏教の診断・治療フレームとして全派共通の基礎となる。
正式名『摩訶般若波羅蜜多心経』。大乗仏教の膨大な『般若経』群のエッセンスを 262 字に凝縮した経典で、7 世紀に玄奘が漢訳した版が東アジアで最も広く読まれる。中心思想は『空』——あらゆる存在は固定的な実体を持たず、関係性の中で現れる——にある。
三法印の第一。『一切の作られたものは変化する』という仏教の根本認識。『平家物語』冒頭『祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり』で日本文化に深く根づいた。固定と変化をめぐる普遍的な世界観。
法然の弟子・親鸞が開いた宗派。師の『念仏』をさらに徹底し、信心すら阿弥陀仏からの賜物とする『絶対他力』を主張。また『悪人こそ救いの対象』とする悪人正機説で知られる。本山は西本願寺・東本願寺。
1175 年、法然が『選択本願念仏集』で開いた日本独自の仏教宗派。あらゆる修行の中から『南無阿弥陀仏』の称名念仏のみを選び取り、これ一つで凡夫も極楽浄土に往生できると説く。民衆救済の仏教を確立した。
サンスクリット語 karman。原義は『行為』。身・口・意(身体行為・言語・思考)のすべての行為が業となり、その結果(果報)が現在・未来の経験を形成するという因果則。仏教・ヒンドゥー教・ジャイナ教に共通する。
サンスクリット語 kleśa。心を汚染し、苦の原因となる精神作用。根本的な三毒(貪・瞋・痴)から派生し、伝統的には 108 の煩悩が数えられる。除夜の鐘 108 回はこれに由来する。
讃岐出身。31 歳で遣唐使として渡唐し、長安で恵果から密教の正統を授かる。帰国後、高野山を開き、真言宗を確立。仏教思想家としてのみならず、書家(三筆の一人)・土木技術者(満濃池修復)・教育者(綜芸種智院)として日本史上の総合天才と評される。
正式名『妙法蓮華経』(サッダルマ・プンダリーカ・スートラ)。1 世紀頃成立の大乗経典で、すべての人が仏になれると説く一乗思想が中心。5 世紀の鳩摩羅什訳が東アジアに広まり、中国・日本仏教に決定的な影響を与えた。
『大きな乗り物』を意味し、個人の解脱を目指す従来仏教(大乗側が『小乗』と呼んだ)を批判して、一切衆生の救済を掲げた革新運動。菩薩思想・空思想・他力思想を展開し、中国・朝鮮・日本に伝播した。
釈迦が悟りの前に捨てた 2 つの極端——王宮での享楽生活と、森での極限の苦行——のどちらにも偏らない実践を指す。単なる『中間』ではなく、対立する両極を超えた質的に異なる第三の道を意味する。
中観派は2-3世紀のインドの思想家ナーガールジュナ(龍樹)が開いた大乗仏教の学派。主著『中論』で『空』と『縁起』の論理を極限まで展開し、一切の事物は他との関係の中でのみ成立する(自性を持たない)と論証した。八不中道——生・滅・常・断・一・異・来・去いずれにも偏らない中道——を掲げ、極端な実体視を解体する。『第二の仏陀』と呼ばれ、チベット仏教・禅・天台の基層をなす思想である。
鎌倉時代の僧・日蓮(1222-1282)が 1253 年に開いた仏教宗派。釈迦の真意は法華経に尽きるとし、『南無妙法蓮華経』の題目を唱えることを本尊とする。他宗批判と社会変革を強く訴え、日本仏教史上最も戦闘的な宗派として知られる。
サンスクリット語 nirvāṇa。原義は『吹き消す』。貪・瞋・痴の三毒(煩悩)の火が吹き消された静寂の境地を指す。仏教の究極目標だが、『何かを得る』ではなく『執着から離れる』という離脱的性格を持つ。
中国唐代の禅僧・臨済義玄(?-867)を祖とする禅宗の一派。日本には栄西(1141-1215)が 1191 年に伝え、鎌倉幕府・室町幕府の保護下で京都五山・鎌倉五山として栄えた。『公案』を用いる看話禅が特徴。
近江出身。788 年に比叡山に草庵を結び、804 年に遣唐使として入唐、天台教学を学ぶ。帰国後、天台宗を日本に確立。空海と同時代のライバルであり友人でもあった。比叡山は以後、法然・親鸞・道元・日蓮ら鎌倉仏教の祖師を輩出する場となる。
サンスクリット語 saṃsāra。原義は『流転』。生と死を無限に繰り返す循環を指す古代インド思想。仏教は六道(地獄・餓鬼・畜生・修羅・人・天)輪廻を説き、その循環からの脱出(解脱・涅槃)を目標とする。
サンスクリット語 bodhi(菩提)・samādhi(三昧)の日本語訳。仏教における、真理を直接把握する根源的体験を指す。段階的な学習の延長ではなく、質的に異なる認識の飛躍として描かれ、特に禅宗で中心的概念となる。
ゴータマ・シッダールタ(前 5 〜 前 4 世紀頃)。釈迦族の王子として生まれ、29 歳で出家、35 歳で菩提樹下に悟りを開き、80 歳で入滅するまで 45 年間インド各地で教えを説いた。四諦・八正道・縁起など、仏教思想の根幹をすべて自ら体系化した。
6 世紀の仏教伝来後、日本固有の神道と外来の仏教を融合させて信仰した独自の宗教形態。『本地垂迹説』により、日本の神々は仏・菩薩の仮の姿とされ、1000 年以上にわたり両者は一体として共存した。明治政府の『神仏分離令』により強制的に分離させられた。
9 世紀初頭、空海(774-835)が唐で学び日本に伝えた密教系の仏教宗派。身(印契)・口(真言)・意(観想)の三密の実践により、この身のままで仏になる『即身成仏』を説く。本山は高野山金剛峯寺。
京都日野の出身。9 歳で比叡山に登り 20 年修行するも 29 歳で下山し、法然に師事。35 歳で越後に流罪、後に関東で 20 年布教、晩年は京都で著述に専念。妻帯・肉食を公然と行い、『僧でも俗でもない』存在としての在家仏教者の生き方を示した。
鎌倉時代、道元(1200-1253)が宋より伝えた禅宗の一派。臨済宗の公案禅と対照的に、『只管打坐(ただ坐る)』という純粋な坐禅を中心とする。本山は福井・永平寺と横浜・総持寺。現在、日本最大の禅宗教団。
サンスクリット語 śūnyatā。2 世紀頃、龍樹(ナーガールジュナ)が『中論』で体系化した大乗仏教の根本概念。『あらゆる存在は固有の本質(自性)を持たず、条件に依存してのみ成立する』という、縁起を存在論の次元で徹底したもの。
中国・天台山を本拠地とした智顗(538-597)が体系化し、日本には最澄(767-822)が 9 世紀初頭に伝えた。法華経を中心に顕教・密教・戒律・禅を総合的に包摂する。比叡山延暦寺を本山とし、鎌倉新仏教の祖師の多くを輩出した。
サンスクリット語スタヴィラ・ヴァーダ、パーリ語テーラ・ヴァーダ(『長老たちの教え』)。大乗仏教と対比される仏教の一大系統で、パーリ語聖典と厳格な戒律を保持。スリランカ・ミャンマー・タイ・ラオス・カンボジアで主流。
7 世紀、ソンツェン・ガンポ王の時代にインドから伝わり、独自発展したチベット仏教。インド後期密教を本流とし、瞑想・儀礼・哲学・医学を統合した総合体系。ダライ・ラマなどの『トゥルク(輪廻転生者)』制度で教義と組織を継承する独特の形態。世界的には 1950 年代以降、西洋への普及が進んだ。
サンスクリット語『結合』の意。心身を統合して究極的実在(ブラフマン)に到達する実践法。紀元前 2 世紀のパタンジャリ『ヨーガ・スートラ』で体系化され、八支則(ヤマ・ニヤマ・アーサナ等)の 8 段階を持つ。現代では健康法として世界的に普及。
唯識(ゆいしき、梵 Vijñaptimātratā)は4-5世紀のインドで無着・世親兄弟が体系化した大乗仏教の学派。『三界は唯だ識のみ』——我々が経験する世界はすべて心(識)の顕現である、と説く。八識(眼耳鼻舌身意+末那識+阿頼耶識)の精緻な分析で、深層意識が経験世界を構築する過程を解明した。中観と並ぶ大乗二大学派であり、認知科学・深層心理学と響き合う東洋的な心の哲学である。
6 世紀、インドからの僧・達磨が中国に伝えたとされる。言語・経典を介さず、坐禅による直接的な体験で悟りに至ることを説く(『不立文字』『教外別伝』)。日本では臨済・曹洞・黄檗の三派があり、武家文化・芸道・経営思想に深く浸透した。
公案(こうあん)は禅宗、特に臨済宗で用いる修行の問い。『犬に仏性有りや無しや』『隻手の音声』など、論理的解答を許さない問いを徹底的に問い続けることで、概念的思考を超えた直観的悟りを誘発する。唐代中国の禅で確立し、宋代の『碧巌録』『無門関』で集大成され、日本では白隠慧鶴が体系化した。現代ではブレイクスルー思考やデザイン思考の源流としても注目される、独特の修行技法である。