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概要
縁起(えんぎ)は、サンスクリット語の pratītyasamutpāda(条件に依存して共に生起すること)の訳。仏教の最も根本的な世界観を示す教義である。
定式化された命題は次の通り:
「これがあればそれがある。これが生ずればそれが生ずる。 これがなければそれがない。これが滅すればそれが滅する。」
あらゆる存在・現象は独立した実体を持たず、無数の条件の連鎖として一時的に現れる——これが縁起の核心である。
十二縁起
人間の苦しみの生起を 12 段階の因果連鎖として示したのが十二縁起:無明 → 行 → 識 → 名色 → 六処 → 触 → 受 → 愛 → 取 → 有 → 生 → 老死。
無明(根本的無知)を出発点に、苦しみ(老死)までの連鎖を示すと同時に、どこかの鎖を断てば苦も滅するという実践可能性を示唆している。
現代への示唆
縁起は、現代のシステム思考・複雑系科学の思想的原型といえる。
- 単一原因論を退け、条件の網として事象を捉える
- 「なぜこの結果が?」を問うとき、線形の因果ではなくフィードバックループを探す
- 組織の問題は誰か 1 人の責任ではなく、構造の相互作用から生じる
経営における責任追及型の分析(犯人探し)は、しばしば縁起的視点を欠いている。構造を見る訓練として、縁起の思考法は今なお有効である。
関連する概念
[空]( / articles / sunyata) / [無我]( / articles / anatta) / 十二因縁 / システム思考
参考
- 原典: 『サンユッタ・ニカーヤ』「縁経」
- 研究: 三枝充悳『縁起の思想』法蔵館、2000