Tag
科学哲学
-
ベイズ主義
トーマス・ベイズ(1701-1761)の定理に基づく認識論。知識を『真か偽か』でなく『確率的信念』として扱い、事前確率に新しい証拠を掛け合わせて事後確率に更新する。20世紀後半、カルナップ、ジェフリーズらが哲学基盤を整備し、現代の統計学・機械学習・意思決定論の基礎となった。『信念を確率で更新する』思考フレーム。
-
ブラック・スワン
ナシーム・ニコラス・タレブ(1960-)が2007年刊『The Black Swan』で提示した概念。(1)予測不可能、(2)極端な影響、(3)事後的には説明される——この3条件を満たす稀有な事象。正規分布を前提とするリスク管理の盲点を突き、金融危機・パンデミック・テロを説明。続編『反脆弱性』は想定外を力に変える原理を論じた。
-
複雑系
20世紀後半に物理学・生物学・経済学の境界で発展した学際領域。サンタフェ研究所(1984-)が拠点。多数の要素が単純なルールで相互作用するとき、部分の総和を超えた全体的性質(創発)が現れる。アリのコロニー、脳、都市、経済、生命——従来の還元主義では捉えられないシステムを扱う新しい科学哲学。
-
サイバネティクス
ノーバート・ウィーナー(1894-1964)が1948年刊『サイバネティックス——動物と機械における制御と通信』で創始した学際領域。フィードバックループ、情報、制御を鍵概念とし、生物と機械を同じ原理で記述した。現代のAI、ロボティクス、システム科学、経営組織論の源流。タイトルはギリシャ語κυβερνήτης(舵取り)に由来。
-
方法序説
ルネ・デカルト(1596-1650)が1637年に刊行した『方法序説』。全ての権威を疑い、明晰判明な観念のみを真理の基準とする方法的懐疑を展開。『われ思う、ゆえにわれ在り』(コギト)に至り、4つの方法規則(明証・分析・総合・枚挙)を提示した。近代合理主義の出発点であり、問題解決の思考フレームの原型。
-
デュエム=クワイン・テーゼ
ピエール・デュエム(1861-1916)が提起し、ウィラード・クワイン(1908-2000)が拡張した科学哲学のテーゼ。仮説は単独でテストできず、常に『補助仮説の束』と共に検証される——反証が出ても、どの仮説が誤っていたかは一意に定まらない(反証の不確定性)。ポパー反証主義への強力な反論であり、全体論的知識観の基礎。
-
反証可能性
カール・ポパー(1902-1994)が『科学的発見の論理』(1934)で提示した科学哲学の中心概念。科学的仮説は『正しいと証明できる』のではなく、『間違っていたら棄却される条件が明確である』ことで科学となる。帰納法の問題を乗り越え、マルクス主義・精神分析を『非科学』と断じた基準。事業仮説の正しい検証法の原型。
-
方法への挑戦
パウル・ファイヤアーベント(1924-1994)が1975年に刊行した『方法への挑戦』(Against Method)。科学史を精査し『絶対の方法ルールは存在しない』と結論。ガリレオもニュートンも時に『非合理』な手段で科学を進めたと論じ、『何でもあり』(anything goes)と宣言。方法論の多元主義と、科学の権威主義への痛烈な批判。
-
状況に置かれた知
ダナ・ハラウェイ(1944-)が1988年論文『状況に置かれた知——フェミニズムにおける科学の問題と部分的視点の特権』で提示した概念。『どこにもない視点』(無の視点)からの客観性を否定し、すべての知は具体的身体・歴史・位置から生まれると論じた。単なる相対主義ではなく『位置の責任』による部分的客観性を提唱。
-
アクターネットワーク理論
ブルーノ・ラトゥール(1947-2022)、ミシェル・カロン、ジョン・ローらが1980年代以降に展開した科学社会学・社会学の理論。人間だけでなくモノ・技術・微生物・法律などの非人間をも『アクター』(行為者)として対称的に扱い、それらが織りなすネットワークとして社会を記述する。科学実験から組織・政治まで射程とする。
-
ノヴム・オルガヌム
フランシス・ベーコン(1561-1626)が1620年に刊行した『新機関』。アリストテレスの演繹的論理学(オルガノン)に対抗し、観察と実験に基づく帰納法を提唱した。人間の認識を歪める『4つのイドラ』(種族・洞窟・市場・劇場)を列挙し、偏見を取り除いた実験的科学の基礎を築いた。認知バイアスの古典。
-
帰納の問題
デイヴィッド・ヒューム(1711-1776)が『人間知性研究』(1748)で提起した科学哲学の根本問題。『太陽は明日も昇る』という帰納的推論には論理的正当化がない、と論じた。経験主義の徹底がもたらした懐疑であり、カント、ポパー、現代ベイズ主義への出発点。過去の成功は未来を保証しない——事業仮説検証の根源的警告。
-
パラダイムシフト
トマス・クーン(1922-1996)が『科学革命の構造』(1962)で提示した科学変化の理論。科学は漸進的な積み上げではなく、『通常科学』の安定期と『科学革命』による非連続的な転換の繰り返しとして進む。プトレマイオス→コペルニクス、ニュートン→アインシュタインのような転換を『パラダイムシフト』と呼び、ビジネス用語としても爆発的に普及した。
-
研究プログラム
イムレ・ラカトシュ(1922-1974)が提示した科学哲学の方法論。ポパーの反証主義とクーンのパラダイム論を統合し、科学理論を『堅い中核(放棄できない核心命題)』と『防護帯(補助仮説で修正可能な外縁)』の構造で捉える。進歩的プログラムと退行的プログラムの区別は、経営戦略における『コアとノンコア』の設計原理と同型である。
-
ウィーン学団
モーリッツ・シュリックを中心に1924年頃から活動したウィーン大学の哲学者・科学者集団。カルナップ、ノイラート、ゲーデルらが参加。論理実証主義の牙城として『検証可能な命題のみが有意味である』とし、形而上学・神学を無意味な疑似命題と断じた。ナチスの迫害で離散したが、現代分析哲学と科学哲学の基礎を築いた。