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概要
GWTは、意識を単一の中枢ではなく、グローバルに共有される情報の放送空間として捉える。無意識下で並列的に処理される膨大な情報のうち、注意と競合の末に勝ち残った少数が全脳に広まり、意識化される。
ドゥアンヌらによる神経的拡張(GNWT)は、長距離結合を持つ前頭頭頂ネットワークが放送の物理的基盤であると提案した。閾値を超えた瞬間に生じる「点火」的な広域活動が、意識の指標とされる。
意識のハードプロブレムに答えるわけではないが、報告可能な意識経験の実証的扱いに成果を上げてきた。
メカニズム
無意識的処理でも多くの認知は遂行可能だが、新規な状況、曖昧な刺激、複雑な問題解決では、情報を多くのモジュール間で共有する必要がある。このとき前頭頭頂ネットワークが作動し、選抜された情報を「放送」する。
実験的には、閾値近傍の刺激を用いて意識化される試行としない試行を比較し、意識化に相関する神経活動パターンを抽出する研究が重ねられてきた。後頭葉から前頭頭頂への広域同期が一つの指標となる。
この枠組みは、麻酔・睡眠・植物状態など意識の変容状態の理解にも応用されている。
意義
GWTは、意識を神秘から計算的機能を持つ情報統合の様式として扱う道を拓いた。広域放送という性格は、柔軟な行動、言語報告、新規学習を可能にする。
他方、GWTは意識の機能的側面に焦点を当てるため、主観的経験の質そのもの(クオリア)には直接答えないという批判もある。統合情報理論(IIT)などと議論が続いている。
現代への示唆
組織にも放送空間が要る
各部署は日々多くの情報を並列処理しているが、全社的に共有され判断の材料になる情報はごく一部である。何を全社に放送するかのキュレーションは、経営の中心的業務の一つである。
注意は有限であることを前提にする
放送空間に同時に載せられる情報量には限りがある。ダッシュボードや会議アジェンダを膨張させる文化は、結果として何も伝わらない状態を生む。焦点の設計は情報量の抑制と表裏である。
点火の瞬間を設計する
重要な論点は、閾値を超えた瞬間に組織全体の意識に上がる。それを偶然に任せるか、経営レビュー・タウンホール・文書化の儀式として再現可能な点火装置を用意するかで、組織の反応速度が変わる。
関連する概念
- デフォルトモード・ネットワーク
- 前頭前野と意思決定
- 注意
- 統合情報理論
- メタ認知
参考
- Baars, B. J. A Cognitive Theory of Consciousness, Cambridge UP, 1988
- Dehaene, S. Consciousness and the Brain, Viking, 2014