宗教 2026.04.14

クルアーン

イスラム教の最重要経典。神アッラーがムハンマドに 23 年かけて下した啓示の集成で、アラビア語原典が絶対視される。

Contents

概要

クルアーン(Qur’an、القرآن、アラビア語「読誦されるもの」)は、イスラム教の最重要経典。日本語では「コーラン」とも表記されてきた。

ムハンマドが 610 年から 632 年までの 23 年間にわたって、天使ガブリエルを通じて受けたアッラーの啓示をまとめたもの。ムハンマドの死後、第 3 代カリフウスマーンの時代(650 年頃)に現在の形に編纂された。

構成

  • 全 114 章(スーラ)
  • 約 6236 節(アーヤ)
  • メッカ期の章(短く詩的、啓示の初期)とメディナ期の章(長く律法的、啓示の後期)が混在
  • 章の配列は時系列ではなく、長さ順(長い章から始まり、短い章で終わる。ただし第 1 章は例外)

アラビア語原典の絶対性

他宗教の経典と決定的に異なる点:アラビア語のクルアーンのみが「神の言葉」であり、翻訳はすべて注釈(タフシール)にすぎないとされる。

  • 礼拝はアラビア語で行う
  • 非アラビア語圏のムスリムも子どもの頃からアラビア語で暗記
  • ハフィズ(クルアーン全暗記者)は尊敬される

主な内容

神学

  • 唯一神アッラーの性質(慈悲深く、全知全能)
  • アダム・ノア・アブラハム・モーセ・イエス・ムハンマドを預言者として認める
  • 最後の審判と復活

律法

  • 礼拝・断食・巡礼・喜捨
  • 婚姻・相続・契約
  • 飲酒・豚肉の禁止

物語

  • 聖書と重なる預言者物語(アダム、ノア、アブラハム、ヨセフ、モーセ、イエス)
  • イエスとマリアの物語(19 章)
  • 神の慈悲と審判

文学的特徴

クルアーンはアラビア語文学の最高峰とされる:

  • サジュア(押韻散文)の美しさ
  • 詩と散文の中間的文体
  • 朗誦(タジュウィード)のための音声的配慮

「クルアーンに匹敵する一章を作ってみよ」(17:88)という挑戦は、ムスリムにとっての「文体的奇跡」(イジャーズ)の根拠となっている。

現代への示唆

クルアーンは、経典と共同体の関係の独特なモデルを提供する。

1. 原典の不可変性

翻訳を「注釈」に留める厳格さは、原典の聖性を 1400 年以上維持する装置となった。企業の 「創業者の一次文書」 をどう扱うかの参考になる。

2. 暗記と朗誦の文化

子どもの頃から全暗記する文化は、共同体の文化的結束を物理的に保証する。ロゴ・スローガン・ミッションステートメントなど、繰り返し唱えて身体化する仕組みの究極形態。

3. 物語・律法・詩の統合

クルアーンは、物語・法規・詩・瞑想を一つの書物に統合する。単一ジャンルに特化した現代のビジネス文書と対照的である。

関連する概念

[ムハンマド]( / articles / muhammad) / イスラム教 / スンナ / ハディース / アラビア語

参考

  • 原典: 『クルアーン』(井筒俊彦 訳、岩波文庫、1957-58 改訂)
  • 研究: 大川玲子『聖典クルアーン』岩波書店、2004

Newsletter

新着の論考を、メールでお届けします。

購読する