宗教 2026.04.14

黄金律

『自分がしてほしいことを他者にせよ』という倫理原則。世界の主要宗教・思想に共通する倫理の核。

Contents

概要

黄金律(おうごんりつ、Golden Rule)は、「自分がしてほしいことを他者にせよ」(または消極形「自分がしてほしくないことを他者にするな」)という倫理原則。

山上の垂訓(マタイ福音書 7:12)のイエスの言葉:

「すべて人にせられんと思うことは、人にもまたそのごとくせよ」

これが「黄金律」と呼ばれるようになったのは 17 世紀以降。世界の主要宗教・思想に類似原則が存在するため、普遍倫理の核と位置づけられてきた。

諸文化における類似原則

文化原則典拠
キリスト教己の欲するところを人に施せマタイ 7:12
儒教己の欲せざるところ人に施すなかれ論語・衛霊公
ユダヤ教人に厭わしいことを人に施すなかれタルムード・ヒレル
ヒンドゥー教自分に痛いことを他者にするなマハーバーラタ
仏教自分が苦しむことで他者を苦しめるなウダーナヴァルガ
イスラム教自分のために欲することを、同胞のためにも欲せよハディース
古代ギリシャ友によって扱われたいように、友を扱えアリストテレス

2 つの形式——積極形と消極形

  • 積極形(キリスト教):「〜せよ」
  • 消極形(儒教、ユダヤ教):「〜するな」

積極形のほうが要求水準が高い——自分が望むものを他者に与えるのは、自分が嫌なことを他者にしないより難しい。どちらがよいかは古来議論がある。

批判と限界

黄金律には哲学的な批判もある:

  • 価値観の押しつけ:「自分がしてほしいこと」が他者と一致するとは限らない
  • 多様性の欠落:異なる嗜好・文化を持つ他者には、自分基準が害になり得る

これに応えて、「プラチナルール」(他者がしてほしいことを他者にせよ)が提案されている(Tony Alessandra、1996)。

現代への示唆

黄金律は、経営における対人倫理の基盤として強力である。

  • 顧客対応の原則 — 自社がされて嫌なことを、顧客にしていないか
  • 人事・評価 — 自分が評価される基準で、部下を評価しているか
  • 取引先との関係 — 自分が取引先としてされたいことを、取引先にしているか

同時に、プラチナルールへの進化は、「自分基準の押しつけではなく、他者視点での配慮」が求められる時代を示す。多様性の中での倫理的リーダーシップは、黄金律 → プラチナルール の上書きが必要である。

関連する概念

[山上の垂訓]( / articles / sermon-on-mount) / [論語]( / articles / analects) / [仁]( / articles / jin-benevolence) / 普遍倫理

参考

  • 原典: 『新約聖書』マタイ 7:12 / 『論語』衛霊公第十五
  • 研究: ハリー・ゲンスラー『倫理の黄金律——世界の知恵』原書房、2014

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