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概要
黄金律(おうごんりつ、Golden Rule)は、「自分がしてほしいことを他者にせよ」(または消極形「自分がしてほしくないことを他者にするな」)という倫理原則。
山上の垂訓(マタイ福音書 7:12)のイエスの言葉:
「すべて人にせられんと思うことは、人にもまたそのごとくせよ」
これが「黄金律」と呼ばれるようになったのは 17 世紀以降。世界の主要宗教・思想に類似原則が存在するため、普遍倫理の核と位置づけられてきた。
諸文化における類似原則
| 文化 | 原則 | 典拠 |
|---|---|---|
| キリスト教 | 己の欲するところを人に施せ | マタイ 7:12 |
| 儒教 | 己の欲せざるところ人に施すなかれ | 論語・衛霊公 |
| ユダヤ教 | 人に厭わしいことを人に施すなかれ | タルムード・ヒレル |
| ヒンドゥー教 | 自分に痛いことを他者にするな | マハーバーラタ |
| 仏教 | 自分が苦しむことで他者を苦しめるな | ウダーナヴァルガ |
| イスラム教 | 自分のために欲することを、同胞のためにも欲せよ | ハディース |
| 古代ギリシャ | 友によって扱われたいように、友を扱え | アリストテレス |
2 つの形式——積極形と消極形
- 積極形(キリスト教):「〜せよ」
- 消極形(儒教、ユダヤ教):「〜するな」
積極形のほうが要求水準が高い——自分が望むものを他者に与えるのは、自分が嫌なことを他者にしないより難しい。どちらがよいかは古来議論がある。
批判と限界
黄金律には哲学的な批判もある:
- 価値観の押しつけ:「自分がしてほしいこと」が他者と一致するとは限らない
- 多様性の欠落:異なる嗜好・文化を持つ他者には、自分基準が害になり得る
これに応えて、「プラチナルール」(他者がしてほしいことを他者にせよ)が提案されている(Tony Alessandra、1996)。
現代への示唆
黄金律は、経営における対人倫理の基盤として強力である。
- 顧客対応の原則 — 自社がされて嫌なことを、顧客にしていないか
- 人事・評価 — 自分が評価される基準で、部下を評価しているか
- 取引先との関係 — 自分が取引先としてされたいことを、取引先にしているか
同時に、プラチナルールへの進化は、「自分基準の押しつけではなく、他者視点での配慮」が求められる時代を示す。多様性の中での倫理的リーダーシップは、黄金律 → プラチナルール の上書きが必要である。
関連する概念
[山上の垂訓]( / articles / sermon-on-mount) / [論語]( / articles / analects) / [仁]( / articles / jin-benevolence) / 普遍倫理
参考
- 原典: 『新約聖書』マタイ 7:12 / 『論語』衛霊公第十五
- 研究: ハリー・ゲンスラー『倫理の黄金律——世界の知恵』原書房、2014